第5章 陽
「まったく、現金な奴らだな……」
の様子を見ていた土方は、彼女にばれる前にとその場を静かに去っていく。なんだかんだ保護者気分でついのことを気にかけてしまう自分に気付き、土方は頬を軽く書きながら早足で部屋へと戻った。
すぐに仕事に戻ろうとも思ったが、何気なく机の引き出しから一冊の本のようなものを取り出しページを捲る。何も書かれていない、真っ白なページを開いたかと思えば徐に筆を取った。墨汁に筆の先を少し濡らすと、筆を走らせた。
「……よし、出来た」
窓の外を眺めてみる。すると、大量の洗濯物を抱えたが庭で物干し竿に、洗い立ての着物を干している姿が視界に入る。ぼうっとそれを眺めてみる。
「変な奴だよな……捕虜だっつってんのに、呑気というか天然というか……気にする素振りも見せずに隊士達の中へ入っていく。恐ろしい奴だよ、ほんとに」
嬉しそうに太陽の光を浴びるに、声をかけることはしない。ただ黙って彼女を眺めては、暖かい日差しに土方はうとうとし始める。
「花みてぇだな」
土方の呟きは、柔らかな風に浚われ消えていく。
襲い掛かる睡魔を追い払うように、土方は窓を閉め机に向かう。そこには先日の池田屋の件に関する書類で埋め尽くされていた。それを一つ一つ整理しながら、とある一枚の紙を拾い上げる。
そこには、変若水と書かれていた。