第5章 陽
元々は男所帯、家事がそこまで出来るのかと聞かれればけしていい方だとは言えないだろう。ともなれば、手慣れている女性がしてくれた方も楽なのだろう。それに隊士達は、普段忙しなく巡察やら別件なので忙しく動いている。
家事をやってくれる人が別でいてくれた方が、結果的に新選組としても助かるということらしい。土方は意外にも快く承諾したとか。
「ちゃん、それじゃあ僕達はそろそろ行ってくるよ」
「さん! お土産必ず持って帰ってきますね」
「あんたの好みそうなもの、見つけてみせよう」
「……千鶴様、一様。お土産は本当に大丈夫ですよ」
は苦笑いを浮かべるものの、内心とても嬉しかったりする。一緒に外には行けないけれど、こうしてそんな自分に優しい言葉をかけてくれる。気を遣ってもらえる。それが単純に嬉しいのだ。
「ふふ、皆様。いってらっしゃいませ」
がそう笑顔で見送ると、その場にいた誰もが固まってを見つめていた。誰の反応も返ってこないことに疑問を覚えたは、瞬きを繰り返して隊士達を眺めた。
「私……何かおかしなことを言いましたか?」
「……やばい、早く帰って来たくなるお見送りだね。そうは思わない? 一君」
「すぐに戻る。あんたは安心して、屯所で待っていてくれ」
「安心してってなに、一君の変なの」
「さん! いってきます!!」
唯一千鶴が一番嬉しそうに笑顔を返しながら、へと手を振った。それにつられて他の隊士達も、嬉しそうにに見送られ屯所を出ていく。それを影から見つめていた土方は呆れたように溜息をついていた。