第5章 陽
「残念だったね、一君」
「何がだ」
ちらりと、が土方の方へ視線を上げればまるでそれを知っていたかのように、土方と目が合う。土方は顔色一つ変えず、視線を外すとお味噌汁を啜る。
あまりにも自然な二人の空気に、少しずつ誰もが本当に兄妹なんじゃないかと思わされる朝食の一コマだった。
陽が真上に来た頃、屯所内では二組がいつもの浅葱色の羽織を着て玄関先に集まっていた。
「総司様に一様、今から巡察……というものに行くのですか?」
「うん、そうだよ。あれ? そういえば千鶴ちゃんは? 今日は一緒に行くって張り切っていたはずだけど」
「副長に呼ばれていた。時期に来るだろう」
「遅くなりました!」
「ほんとだ。千鶴ちゃん、遅刻だよ」
「す、すみません。土方さんに呼ばれていたので……」
「流石土方さんの小姓ってとこ?」
沖田が千鶴をからかっていると、斎藤がへと一歩近寄る。
「、土産を買って来よう。何がいい?」
「お、お土産ですか? えっ、いえ、その、気を遣って頂かなくとも私は大丈夫です。歳三様に頼んで、暫くはこの屯所内の家事全般を任せてもらえることになったのです」
「家事を? あんたが?」
「はい。私は千鶴様と違って、刀の心得もなければ身を守る術も持ち合わせておりませんので。ついでに信用もないので、外に出ることが出来ませんから。暇を持て余すよりかは、家事をさせて頂ける方が有難いです」
「自然と自虐が入ったね、ちゃん」
沖田がさりげなく話に割り込んできた。
まだについては知らないことも多い、土方が警戒するのも無理はないだろう。外に出ることを許してもらえないはせめて何か屯所内で出来ないかと模索した結果、家事へと行き着いたらしい。