第5章 陽
「私、家事全般は得意なのです! じっとしていてもつまらないですし……やらせてもらえませんか!?」
「……そりゃ、正直隊士達が交代で作る飯はその班によって味が変わるし、上手い飯が安定した飯が毎日食えるならそれに越したことはないが……」
「そうと決まれば千鶴様は何処ですか? 千鶴様!!」
「あ、おいこら! 廊下を走るなじゃじゃ馬娘!!」
楽しそうに千鶴を探し始めるを追いかける土方。そんな呑気な様子を、外の井戸で顔を洗っていた斎藤は目にしていた。
昨日の土方の言葉が嘘のようだ。探っていろと言う割には、なんだかんだああして楽しそうに交流を深めている。の空気にまんまと乗せられているせいなのか、それとも土方自身彼女と少しは親しくなろうという思いなのか。
どちらにしても、また一段と賑やかになった屯所に、斎藤はほくそ笑んでいた。
走り回るをようやく掴まえた土方は、がみがみとお説教しながら台所へとを連れて行く。その光景をすれ違い様に見ていた隊士達は「仲のいい兄妹ですね」と野次を飛ばしていた。その度に、土方の怒声もまた響き渡る。
けれど、がその光景を見て楽しそうに笑っているのを知り、土方はなんとも言えない気持ちのまま苦笑いを浮かべた。
「此処が台所だ。千鶴! いるか」
「はいっ、おはようございます土方さん。どうかしましたか?」
「がどうしても手伝いたいんだと」
「さんが!? わあ、嬉しいです。実は平助君がお塩の加減を間違えてしまって、困っていたんです。どうぞ宜しくお願いします!」
「千鶴酷くね!? 俺だってこれでも頑張って……」
藤堂が嘆きながら、の方へと視線を送る。すると、急に藤堂は石みたいにぴしっと固まって動かなくなった。