第5章 陽
太陽の光が眩しい。瞼をくすぐる光に、はゆっくりと目を開けた。
「千鶴様、もう起きてらっしゃるのでしょうか」
部屋には既に布団がきちんと畳まれており、千鶴の姿は何処にもない。千鶴を探すように、は部屋を出て廊下を歩き始める。まだ時間的に早いのか、誰かとすれ違う様子もない。暫く歩き続けていると「おい」という声に引き留められる。
振り返ってみれば、昨日ぶりの土方の姿がそこにあった。ただ……には一つ、気になることがあった。
「土方様、おはようございます」
「歳三と呼べと言ったろう。他の隊士達には昨日の内に事情は話してある、だから屯所内を歩き回っても特に問題はないが……話はきちんと合せておけ。あと、呼び方には気を付けろ。他の奴らの事も、出来るだけ下の名で呼べ。その方がそれらしく見える」
「はい、かしこまりました。歳三様」
「……ところで。お前、こんなところで何してやがるんだ?」
「部屋に千鶴様の姿がありませんでしたので、何処にいらっしゃるのかと思いまして探しておりました」
「この時間なら、飯の準備をしに行ったと思うが……」
「朝食の準備ですか? 私にも、お手伝いさせて頂けませんか!?」
「はあ!?」
昨日とは打って変わって、少し嬉しそうにお願いしてくるに、少しだけ意外だと感じている土方がいた。怖いもの知らずというか、あんな緊迫した空気の中で初めて土方と対面したというのに、この態度である。