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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第40章 旗



「それは俺の台詞だ。志摩子、俺と共に在ってほしい。俺が最後まで、お前を守り抜くと誓う。だから俺の傍に……俺だけの傍にいてくれ。そして、俺の隣で……ずっと笑っていてくれ」

「……はいっ」


 時代を駆ける、世界を駆ける。これは時代の荒波に飲まれながら、それでも必死に互いを知り自分と向き合い、強さを求め弱さを認め生き延びた誰かと誰かの物語。

 どんな世界であったとしても、どんな未来が待っていようとも、その全ては自分次第だということを忘れてはいけない。


 迷え、足掻け、悩め、そして世界は廻っていく。


「志摩子、北の地へ行かないか? そこで静かに暮らそう」

「北……」

「機会があれば、志摩子の家を尋ねてみるといい。勿論必要ないと思うなら、それでもいい。今はお前と、静かな場所でひっそりと暮らしたい」

「……貴方が、そう望んで下さるのなら」


 そっと、誓いのように唇を重ねる。

 明日があるなら、何度でも。


 約束を重ねて、誓いを求めて、互いを愛して。


「一様。男の背中には、何があると思いますか?」


 志摩子が、問う。その言葉に意味はあるのか、ただの言葉遊びなのか……それは彼女にしかわからない。それでも彼は答えるだろう。

 白い桜の花びらが舞い落ちる。冬は融け、春が訪れた証拠だ。


「武士の背にあるものとすれば、傷か?」


 志摩子はくすっと笑う。


「違います。女の手によってつけられる、爪痕です」


 夢の跡が此処にある。これは、少女が見た男達との儚く脆いお伽噺。いや、お伽噺にするには足りないくらいに……痛くて熱い、心の奥が燻られるような物語であろう。


「さあ、行こう」


 揃えた足を、未来へ向けて。

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