第4章 闇
「斎藤か、こんな時間に呼び出してすまねぇな」
「いえ。それで……どういったご用件でしょうか」
「お前、一度あの志摩子と会っていると言ったな? 知ってること、全部聞かせろ」
「はい。俺が知る限りでは、三日ほど前に都に来たばかりだと聞きました。巡察中、柄の悪い男二名に絡まれていたところを俺が助けました。その後、一人で出歩きまた別に輩に絡まれても厄介だからと……都を一通り案内しました」
「へぇ、斎藤が案内ねぇ……確かに志摩子は所謂別嬪さんだったからなぁ。そうしたくなる気持ちもあるのだろう」
「ふ、副長!」
「ははっ、冗談だ」
土方は表情を崩し、笑みを浮かべたがすぐにまた無表情へと戻っていく。
「怪しいところは、何もなかったのか?」
「ありませんでした。夕方になり、彼女は連れの元へ戻ると言ってすぐに別れました。そこまで送ろうかと申し出ましたが、すぐ帰れるからと……。その後は、総司と合流したので何もありません。ああ、例に団子を貰ったくらいで」
「そうか……。連れってことは、志摩子はその風間って奴と都に来た可能性が高いわけだ」
「彼女の目的は?」
「人探しだそうだが……」
「雪村と、まるで同じですね」
土方は唸り声を上げながら考え込んでいた。
――今暫く、それを貴様らに預けておこう。大事にするがいい。
ふと、土方は風間のその言葉を思い出す。最初は千鶴のことを言っているのかと、そう思っていたが……もしそうだとするなら風間は千鶴を知っている可能性がある。だがもし、そうではなく……押し入れにいた志摩子のことを差しているのだとしたら。
どちらにしても、志摩子を此処に置いておけば奴は現れる気がした。
「斎藤。お前になら、志摩子も何か話すかもしれねぇ。唯一の顔見知りなわけだしな、時間がある時でいい。探りを入れておけ」
「わかりました」
「俺達はそれよりも……綱道さんを早く見つけなくちゃならねぇ。新選組のためにもな」
「承知しております」
夜が更けていく。それぞれの思いを抱いたまま。