第37章 幻
「平助様……ご無事だったのですね」
「……久しぶりだな」
「はい、他の皆様はお元気ですか?」
「そりゃもう、元気すぎて。あ――でも……近藤さんが」
「近藤様が……どうかしたのですか?」
「戦の途中で、敵軍に……捕まって。それから……」
その後の言葉はなかった。けれど彼の言葉にだいたいを察したのか、志摩子は「そうですか」と代わりに言葉を続けた。
「あの、此処は何処ですか?」
「仙台城だ。俺達は、羅刹隊を連れて綱道さんと一緒にいる」
「どういう、ことですか?」
「ごめんな、どうしてこんなことになったんだろうな。土方さんや千鶴達とも離れて、一君は新選組を離隊するし。総司の奴は松本先生の元で療養していたはずなのに、姿を消しているし」
「一様が、離隊なさったというのは本当ですか……っ!?」
「ああ、本当だ。お前との約束を守るんだと……そう言って出ていった。おかしな話だな、その一君より俺達の方が先に志摩子と再会することになるなんて」
「新選組を何より大切に想っていた一様が、どうしてっ」
「お前のことが、それ以上に大切だからじゃないのかな」
ようやく藤堂は志摩子へと視線を向けた。彼の瞳の奥は、迷いに揺れていて志摩子は思わず牢越しに藤堂へと手を伸ばした。