第4章 闇
「はい、私の父……雪村綱道というんですけどその父が都へ立ってから半年、連絡がない状態が続いたんです。こまめに手紙を送ってくれていた父の手紙が突如途絶え、心配になった私は一人身を置いていた江戸を発ち、この都にやってきたのです」
「そうだったのですね。確かに、女性の一人旅は何かと危険が付き纏うのでしょう、それで……男装を?」
「そうなんです。それで……都に着いてすぐ、怪しげな輩に追いかけられる羽目になって、成り行きで……こんなことに」
そうして千鶴は苦笑いを浮かべた。
「新選組の皆様はその時、私を助けてくれた恩人なんです。それで、事情を話したところ……新選組の方々も私の父を探しているとのことでしたので。お力をお借りすることに」
「そうですか……千鶴様は、雪村の家の事を何処までご存知ですか?」
「え……?」
「いえ、なんでもありません。お気になさらないで下さいね」
千鶴は首を傾げたが、それ以上志摩子に深く尋ねてくることはなかった。
志摩子の中で、輪郭を得た様に確信へと全てが変わっていく。彼女、雪村千鶴はあの雪村家の娘で間違いない。綱道を父と呼んでいるということは、雪村が堕ちた際に分家である綱道に拾ってもらったのだろう。
彼女の雰囲気を察するに、酷い仕打ちは特に受けることなく普通に育ってきたのだろう。でなければ、父のためにと危険を冒してまで一人江戸から都になど来ようとは思わないはず。