第4章 闇
「雪村、ちょっといいか?」
「はい! 大丈夫です」
中から少し高い声が聞こえてくる。土方が戸を開ければ、そこにいたのは池田屋で一度目にしている少年の格好をした少女。
「こいつは蓮水志摩子、訳あって新選組で預かることとなった。一応屯所内では、俺の妹として扱うが……まぁ、なんだ。女同士、仲良くするにこしたことはねぇだろ。今日から相部屋だ、いいな」
「あ、はい! そうですよね、女性を一人部屋にしておくのは、危険ですし……」
「それはお前にも言えることだがな」
土方は呆れたように溜息をはくが、志摩子を部屋に入るよう目配せする。
「蓮水さん、初めまして。私は雪村千鶴と申します、どうぞ気軽に千鶴と呼んで下さいね」
「私のことも、志摩子で構いません。千鶴様」
「さ、様!?」
「癖らしい。気にすんな」
「は、はい」
土方は用は済んだとばかりにその場を去っていく。残された二人は少しだけ苦笑いを浮かべながら、志摩子は部屋の奥へと入っていった。
「まさか、男装も何もしていない女性が新選組の屯所に預けられるなんて、夢にも思っていませんでした」
「そんなに女性がこの屯所にいるのは、珍しい事なのですか? 千鶴様も女性ではありませんか」
「え? あ、まぁそうなんですけど……私の場合は目的があって、その為に男装をしながら新選組の方に手助けして頂いているんです」
「目的? よかったら、私にその目的を聞かせてはくれませんか?」
志摩子の中で、雪村千鶴と名を聞いた瞬間からこの者が風間の探している雪村家の生き残り、そして……唯一の女鬼であろうことはほぼ確定していた。とはいえ、もしもということもある。証拠集めは重要だ。