第35章 誓
ようやく地下への道を千里眼で見つけ、そっと扉を開く。ますます唸り声は大きくなり始め、私は恐る恐る下へと階段を降りていく。男の唸り声であることに気付き、同時に女の泣き叫ぶ声も聞こえてくる。此処で今、何が起きているというのでしょうか?
「あああああッ、やめて! やめてよぉおおッ!!」
「お前も、贄となるのだ。奴が自殺などしなければ……お前はこうならずに済んだものの」
「嫌だ! 嫌だあああああッ!!」
あまりにも悲痛な叫びに、思わず耳を塞ぎたくなる。階段を降り切って、そっと身を隠しながら様子を伺ってみる。
「兄さん!! 兄さんっ! どうして、どうしてどうしてどうして!!」
「天。お前は俺と共に、蓮水家の女鬼を守る護身鬼となるのだ。喜べ! 大好きな姉を、死ぬまで守り続けることが出来るのだからな」
「痛い! 痛いよ兄さんッ!!!」
「静かにしろ。背に焼印を入れているだけだ、儀式はこれで終わる。お前の魂は、未来永劫と共に」
「……っ!!?」
悲惨な光景に、私は目を逸らし身体を一気に隠す。どうして、どうして天が栄兄様に押さえ込まれ背中に蓮水家の焼印を施されているのか? 彼らの足元には、昼間見かけた侍女達が裸同然の姿で泣き叫び縄で縛られていた。どうして?
「さて、次はお前達か。昼間に悪口を聞こえる大きさで叩いていたらしいな? どうやらお前達には、まだ蓮水家の純血の女鬼がどれだけ貴重か理解が足りていないらしい。お前達は、何かあった時我が家の女鬼を命を代えて守るのが使命。忘れたか?」
侍女達は泣きわめき許しを乞うばかりで、兄の問いに答える様子はない。兄は然程興味なさげに、刀を抜いた。