第4章 闇
「志摩子君っ、これから宜しく頼む!」
「土方君は少し怖い人に思えますが、大丈夫ですよ。怖がらなくて大丈夫ですからね、志摩子君」
そうして二人は部屋を出て行った。
残ったのは土方と志摩子のみ。何とも言えない空気が、この場を満たしていく。
「はぁ……もう、わかったよ。しょうがねぇな」
土方はがしがしと頭を掻いて、志摩子へと視線を向けた。面倒くさそうにしながらも、その瞳は少しだけ優しい。志摩子は恐る恐る、顔を上げる。
「お前は今日から、俺の妹……ということになった。あ――だが……新選組の幹部共には、事実を伝えておくから何かあった時は俺達が何とかしてやる。それと……一応妹ってことだからな、俺のことは歳三と呼べ。下の名で呼ばねぇと、変だからな」
「わかりました……歳三様」
「……様はいらねぇ」
「す、すみません。その……癖なので、お気になさらないで下さい。兄にも、いつもこうなので」
「……志摩子、お前兄がいるのか」
「義兄です。ですが、とても強くて優しい人ですよ」
「そうか」
土方はその場の空気に耐え切れなくなってきたのか、急に立ち上がった。
「とりあえずお前の部屋だが、一人にして逃げ出されても困るからな。雪村のところへ連れて行く」
「雪村……」
「会えばわかる」
志摩子が引っかかっていたのは、雪村という名だ。二つともないはずのその名、彼女が忘れるはずもない。もしかして……。
土方に連れられ、志摩子はとある部屋へとやってくる。