第34章 離
「今度は、もう会うことはないのでしょうか?」
「あの頃とは違う、俺は俺の意思で今度こそ新選組を離れる」
「新選組に席を置いたまま、志摩子さんを迎えに行くと言う選択肢は出来ないのでしょうか!? 土方さんだって、本当は志摩子さんに会いたいんじゃないんですか!?」
「……」
土方はバツが悪そうに顔を逸らす。彼らをずっと近くで見て来た千鶴だからこそ、気付けるものもあるのかもしれない。千鶴は意を決して、ぐっと拳を握りしめ発言する。
「お二人は、志摩子さんを心から大切に思っているのでしょう!? お慕いして……いらっしゃるのではないですか!? それぞれ守り方は違えど、お二人は志摩子さんに……」
「雪村。そこまでわかっているのなら、どうか俺を引き留めないでほしい。副長には新選組を率いる役目もある。それ故に出した結論だ。副長の結論は、同時に新選組の意思でもある。俺はそれに反抗する、ならば新選組隊士で在るわけにはいかない」
「斎藤さん……っ」
「副長、宜しいですね?」
「……ああ」
「土方さんっ!!」
斎藤は一度止めた足を再び前へと、出して歩き始める。平助は一人、息を吸っては吐き大きな声で斎藤を送り出した。
「俺は自分の道のために、羅刹になることを選んだ。一君は一君の道のため、だから後悔はしないでくれよっ!! またなっ、一君!」
すると斎藤は、背を向けたまま軽く手を振った。それだけで、今は十分だろう。肩を落とす千鶴とは対照的に、平助は笑顔で斎藤を見送る。