第4章 闇
「トシ、彼女の処遇だが……」
「このまま解放するわけにもいかないだろう。あいつ……雪村を見て今暫く預けておくと言っていた。ということは、あいつは少なくともまた千鶴目当てで現れる可能性がある。その時にこいつは使えるかもしれねぇ」
「そうですね、私も土方君の意見に賛成です。暫くうちで様子を見るのはどうでしょう」
「……そうだな。しかし、彼女は女性だろう? この屯所に普通に置いていいものか……」
「それなら、私に名案がありますよ」
山南はにっこりと笑って、何故か土方を見つめた。土方はすぐに嫌な予感を感じ取ったのか、嫌そうに目を逸らした。山南がこんなにもいい笑顔を浮かべているなんて、絶対に嫌な予感しかしない。そして、その予感はだいたい当たる。
「彼女を、土方君の妹君ということにして置いておけばいいのです」
「はあ!? 山南さんっ、あんた何馬鹿なことを言って……!」
「鬼の副長の妹ともなれば、隊士達も簡単に手は出しませんし……これ以上ない案だと思いますよ」
「……けどよ……俺には小姓もいて、そんな手を焼いている暇など……」
「志摩子君、貴方は今日から土方君の妹として振る舞って頂きます。それが、貴方を生かす最善です。わかりましたね?」
「……わかりました」
「山南さんっ!!」
「なら、今すぐ彼女を殺しますか? いいんですよ私は、それでも」
「……くっ」
山南のその言葉に、土方は押し黙る。近藤と山南は立ち上がると、一言志摩子に声をかけた。