第31章 絆
「平助様! 平助様っ!! しっかりして下さいませ!!」
「平助君っ!!」
千鶴も藤堂に駆け寄り、志摩子と共に彼へと呼びかける。返事はしないものの、痛みで顔を歪め息もある。
「興ざめだなぁ。何ボク達の殺し合いに飛び込んじゃってるのさ! ばっかみたい」
「……おい、貴様」
凛と張りつめた声と共に、斎藤が姿を見せた。皆を庇うように、一人前に出て刀の柄に手を添える。
「お前は……あの時の奴じゃん! 何、ボクと遊んでくれるの?」
「目的は志摩子か?」
「そうだねぇ。こんな人間のところに、いつまでも置いておけないし……そろそろ返してもらおうかなって」
ぐっと斎藤は構え、腰を低く落とす。
「お前のような奴に、渡してやるものなど何もない」
「ふぅん……ボクに敵うと思ってるわけ? 人間の分際でさっ!!」
容赦なく天の薙刀が襲い掛かる。だが、斎藤は一瞬の隙を見切り天の懐へと斬り込んだ。あまりに予想外の速さに、初めて天の身体に傷がついた。腕を斬り付けられ、天は驚愕の色を見せながらやがて高笑いへと変わっていく。
「あっはっはっ! 凄い、凄い面白いよっ!! 鬼の姿になっても、まだボクにこんな面白いことをしてくれる人間がいるなんて!! ああ、本当に面白くてうざったいなぁあああッ!!!」
みるみる内に傷が治っていく。それを目の当たりにし、斎藤が驚くとその瞬間をまるで狙っていたかのように天の刃が斎藤を襲う。
「危ないっ!」
志摩子が咄嗟に渦中へと飛び込み、斎藤へと体当たりする。お陰で斎藤は、志摩子と共に刃を避け床へと転がった。
「……姉様にとっての新選組って何、そんなに大切なものなの? 自分の身を犠牲にしてでも、守りたいって言うの?」
「……守りたいです」
志摩子は床に打ち付け、痛む身体を必死に奮い立たせながら、立ち上がる。真っ直ぐと、天を見据えて。