第31章 絆
「ああもうっ、お前も鬱陶しいなああ!! ボクの懐に容赦なく飛び込んでくるなよっ!」
「それは出来ない相談だっ!!」
戦況は若干山崎の方が有利に思えた。しかし、刀と薙刀。いつもの戦闘とはまた一味違う感覚に、なかなか山崎は一撃を食らわすことが出来ずにいた。志摩子に教えられた天の癖を、戦いの中で見極め突くものの、顔を歪ませながらも天の防御もまた堅い。
やがてどちらも進展のないまま、睨み合い刃を受け合う攻防戦が続いた。
一瞬でも気を抜けば、全て持っていかれそうだ。
「ええっと、お兄さんもなかなかやるんじゃないの!? でもね、ボクを舐めてもらっちゃ困るんだよ……ッ!!」
「ぐあ……ッ」
天の風貌が変化する。鬼の姿となった彼は、先程とは比べものにならないくらいの腕力で薙刀を振り回した。流石の山崎も受け切れず、志摩子の方へと吹き飛ばされる。
「山崎様!!」
「う……っ、これは……一体?」
「特別にボクが、急に強くなったわけを教えてあげようか? お兄さん。それはね、ボクが鬼だからだよ」
無邪気に笑う彼だったが、手に握られた薙刀を下ろす様子はなかった。
「ボク達鬼は、人里で暮らすため普段は人の形を取っているんだ。でもね! それは本来のボクらじゃないの!! 本当のボクらは、こっち。本来の姿に戻ることで、真の力を発揮するってわけ。わかった? 弱いお兄さん」
「ぺらぺらと喋っている暇など、あるのか……ッ」
山崎は態勢を立て直すと、天へと斬りかかる。しかし本来の姿に戻った彼に、同じようなことが通じるはずもなく。天の一振りで、更に山崎は後方へと飛ばされていくのだった。