第31章 絆
「志摩子君は俺の後ろに! 絶対に俺の前に出るんじゃない」
「私が合図をしたら、山崎様はそれに従って下さい」
「わかった」
「なぁに? 二人でこそこそと、面白いじゃん!」
先に斬り込んできたのは天だ。大きく振り被って、自在に薙刀を操る。志摩子の声が、天には聞こえぬように配慮されながら山崎へ支持を飛ばす。軌道を読み、志摩子の指示で二人は上手く天の攻撃を避けた。
それを見た天は、即座に眉間に皺を寄せた。
「姉様の力……厄介だよねぇ。女鬼の血を守るため、そのためだけに代々受け継がれてきた力。刀を握れない代わりにと、姉様のような女鬼が与えられる危機回避の力。ああ、もうほんっとうざったい!!」
単身で避けるよりも、支持を出しながら避けるのはやはり困難に近い。ぎりぎりに避けながら、山崎が上手く刀で攻撃を受けて流す。
「攻撃を避けてばかりじゃ、ボクに傷一つつけられないよ!?」
「山崎様! 今です!!」
瞬時に天の癖を読み取った志摩子が、彼に出来た隙を山崎へと教える。そうして一気に、山崎は辛うじて天の懐へと入り込む。鋭く切り込むが、天もそう甘くはない。巧みに武器を使って避け、また彼に有利な間合いへと戻ろうとする。
だが、此処からは山崎の番。志摩子は二人へと距離を取り、邪魔にならないように後退する。と同時に、山崎は食らいつくように天へと反撃を開始した。
銀色の光が飛び散り、刃を交える音が響き渡る。