第30章 劔
「では、私も共に参ります。この屯所を守るため、私の目をお使いください」
志摩子の瞳が、再び色を帯び金色に光る。
「志摩子君……?」
「私は、相手の動きを先読みする力を持つ鬼です。もしもの時、私が必ず……皆様をお守りします。鬼である私は、ある程度の傷であればすぐに治癒します。もう、守られるだけは……嫌なのですっ!」
「しかし、君は刀を握れないではないか……」
「ですが、この目をもってすれば相手の攻撃を避けることは可能です。もしかしたら、天の隙をつき反撃することも出来るやもしれません!」
「それに、懸けろと?」
「私達で出来ることを、したいだけです」
志摩子もまた、決意に満ちた瞳で山崎を真っ直ぐと見つけ返した。山崎は半ば諦めたように、薄く笑みを浮かべると、志摩子を抱え直した。
「いざとなれば、君だけでも逃がす。それは絶対だ」
「はい……っ」
二人は他の隊士達に注意を呼びかけながら、覚悟を決めて天のいる方向へと大きく駆け出した。