第4章 闇
「私は山南敬助と申します。此方が我が新選組局長、近藤勇さんです」
「近藤だ、まず君の名を聞かせてもらおうかな?」
「……蓮水志摩子と申します」
「そうか、志摩子君か。まぁそう堅くなるな」
「近藤さん、それはちとおかしい発言じゃねぇか? 捕虜に対して、堅くなるななんてよ」
「まぁまぁ。彼女は刀も持たぬおなごだろう? ならば、ただの民の可能性もある」
「いやいや、明らかにあの男の仲間だろ! でなきゃ、なんであの時あの場所にいるってんだ!? どう考えてもおかしいだろう」
「トシは相変わらずだなぁ」
「……あんたがおざなりなんだろう」
「土方君、近藤さん、彼女が困ってるじゃないですか」
山南さんでさえ、呑気に「すみませんね」と志摩子に声をかけていた。志摩子はそれでも緊張を解くことはなく、しっかりと三人を見つめていた。
「君は……いい目をしているな」
「え?」
近藤の思わぬ言葉に、志摩子は目を丸くした。
「さて、君がどうしてこの新選組の屯所にいるのかだが……池田屋にいた不貞浪士を、俺達新選組は捕縛することを目的にあの場に馳せ参した。しかし、刀を持たぬ君はトシ達が刀を交えた風間千景という者がいた部屋の押し入れにいたと聞いている。それは、何故かな?」
「……何故?」
「ああ、君は……浪士達の仲間なのか?」
「とんでもございません! それ以前に、千景様もその浪士の方々の仲間ではないと思います! たぶん……」
「たぶん、とは?」
「……詳しいことは、何も知らないからです。私は、千景様に連れられてつい先日北国からこの都へ初めて足を踏み入れたばかりです」
「何の目的に都へやってきた?」
土方は鋭い視線で志摩子を射抜く。何をどう説明すればいいのかわからず、志摩子はただ覚悟を決める。きっと此処で嘘をつこうものなら、すぐにでも斬り殺されるだろう。ただ問われたことに関してだけ、素直に答えた。