第30章 劔
「志摩子君!!」
「あ……山崎、様」
慌てて屋根から庭へと飛び降り、屯所の惨状を目の当たりにして一目散に志摩子へと駆け寄った。
「志摩子君っ、これは一体……!?」
「天が、私の弟が薙刀を持って羅刹を斬って歩いております! どうか、まだ屯所内におられる隊士を安全な場所への非難をお伝えして頂きたい!!」
「しかし……君はどうする!? 一人で……」
「私は大丈夫です。お願いです、別の刺客もまだ息を潜めています。歳三様達は、どちらに!?」
「伊東さんの件で出ておられる……。今すぐ動けると言われれば、俺と井上さんと島田さんくらいだ」
「すぐに合流を……っ!」
「……。君の安全が第一だ」
「山崎様!」
山崎は志摩子を抱き上げると、現状把握のため天とは距離を取りながら屯所内を駆け回る。
「曲者だ! 曲者だ出たぞ!!」
山崎がそう叫べば、屯所内で控えていた隊士達が刀を持ち次々外へと飛び出してくる。遠くの方で、交戦しているような、悲鳴が聞こえてくる。
「薙刀を持った奴とは戦うな! 隙があれば広い場所へ出るんだ!!」
騒ぎを聞きつけ、山南もゆらりと姿を見せた。
「山崎君、これは?」
「志摩子君を狙った蓮水天の襲撃のようです」
「あの! 私、先程綱道様を見かけました!!」
「それは本当ですか? 志摩子さん」
志摩子の言葉に食いついたのは、山南だった。昼間のことはあるけれど、とにかく今の山南は信用していいような気がした。