第28章 鬼
「おい、志摩子。聞こえなかったのか? 部屋に戻ってろ」
「私がいることで、きっとこれから皆様にご迷惑をおかけすると思います。それでも……っ」
泣きそうな顔で、けれど必死に志摩子は顔を上げ唇を噛んで、まるで何かを決意したように勢いよく土方へと言い寄った。
「それでも私は皆様と一緒に在りたい! だから、ずっと此処に置いて下さいませんか!?」
「お……っ、どうした急に珍しいこともあるもんだな。志摩子がそんな血相掻いた様子で、俺に言い寄ってくるなんてよ」
「……っ、もっ申し訳ありません」
「だがな……」
気付いた時には、大抵遅い。
志摩子の手首を掴んだ土方は、そのまま畳へと押し倒し彼女の足の間に自らの足を差し入れた。淡い橙色の光が、襖越しに部屋を照らし始めていた。
「俺はお前に惚れてる。前にそう言ったのを忘れたとは言わせねぇぞ」
「……とっ歳三様! やめ……ッ」
「男と二人きりになるってことが、どういうことか……教えてやろうか?」
するりと土方の手が、志摩子の足を撫でようと着物の合わせから手を滑り込ませ、直に肌へと触れる。感触を確かめるように、土方の手はゆっくり志摩子の足を撫でた。だんだんと志摩子は、何をされるかわからない恐怖と羞恥に顔を青ざめたり赤くしたりしていた。
「歳三様……っ」
「いつになったら、お前の返事を聞くことが出来るんだ?」
土方が志摩子の首筋に唇を寄せたと同時に、土方は何かに気付いたのか突然動きを止め志摩子から離れた。何が何だかわからない志摩子は、土方にされるがままに起き上り身を整えた。