第28章 鬼
「私はね、志摩子さんにもっと外の世界を知ってもらいたいって思う。だからこそ、蓮水家へ連れ戻しにやってくる人達にも、天にも……貴方をけして渡したりしない。新選組に居れば、また危険な目に遭う。今度は只では済まないかもしれない。その前に、私達と共に来てほしい」
「え……?」
「私達の一族が、必ず貴方を守ってみせる。完璧にとはいかないかもしれないけど、それでも彼らと一緒にいるよりはいいと思うの」
そうして千姫は、一度土方へと視線を向けた。どうにも都合のよすぎる話に、土方は眉間に皺を寄せ千姫を睨みつけた。
「要するに、俺達じゃ志摩子を守れないから渡せって。そう言ってんのか?」
「ざっくりと申し上げると、そうなります」
「ふざけてんじゃねぇぞ! 何が鬼だ、護身鬼だ。そっちによこしたところで、本当に志摩子を守れるかもわかんねぇんだろ? だったらあんたら、引っ込んでおいてもらおうか!!」
「変若水の研究をしていたのは、蓮水家だと言ってもですか!?」
「……っ」
土方は大きく顔を歪めた。変若水の研究については、一度栄の口から聞いている。今更驚くことではない。けれど……。