• テキストサイズ

薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第28章 鬼



 ――慶応三年十一月。


 新選組に大きな転機が訪れる。とは言っても、それはあまりいい転機ではなかった。新選組の元へ、千姫が尋ねに来ていた。

 その知らせを聞いた志摩子と千鶴は、土方の部屋へと集まることとなった。


「で? お前さん達、こいつらに何の用なんだ」

「用というほどのことではないのだけれど、回りくどいことを言ったところで状況が変わるわけではない。なので単刀直入に申し上げます。蓮水志摩子を、今すぐ手離して頂きたい」

「何……?」

「千鶴ちゃんに関しては、百歩譲って貴方達に委ねます。ですが蓮水の者達が、彼女を連れ戻しに都へ集まり始めているのをご存知ですか?」

「知らねぇな。第一、どうしてこいつが狙われる? そんなにその蓮水家とやらに、志摩子は必要だったいうのか」

「……皆様に、鬼について私から話した方が良さそうね」


 千姫は軽く咳払いをして、一つ一つ話し始めた。


「古来より鬼は、人間とは異なる生を持ち異質な力を持つ故に、人間にその力を利用されてきました。異常な治癒能力、並外れた身体能力、人の目では見えぬものを見ることが出来き、一瞬先を見通す力、千里眼。ですが私達は本来争いを好まぬ一族。よって、人里から離れ隠居することで私達は戦を避け人間に二度と利用されぬよう四つの家に土地を分け与え、統括し暮らすこととなりました」

「四つの家?」

「はい。私達はこれを"大四家"と呼んでいます。東西南北にそれぞれ分かれ、鬼を束ねることで私達はようやく安息の地につくことが出来ました。東の雪村、南の南雲、西の風間、そして……北の蓮水。暫くはそれで何の問題もありませんでした。ですが……雪村が滅ぼされたと知らせが入り、事態は急展開を迎えております」

「それで、それと志摩子。どんな関係がある?」


 志摩子も知りえぬ何かが、今此処で語られようとしていた。そんな不安からか、千姫は一度志摩子を見る。けれど思っていたほど、志摩子に動揺の色も不安も見受けられなかった。千姫は一呼吸おいて、言葉を続ける。

/ 359ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp