第27章 滴
「総司は立派にお前を守り抜いたのだろう。それはけして悲しいことではない、だからお前は泣くな」
「でも……っ! それでも私はっ」
「お前を守れなかった方が、きっと総司は辛かったはずだ。お前にとっては、総司が怪我をする方が辛いだろう。それと同じように、総司もお前が傷付くことや守れないことを恐れ辛いと感じていたはずだ。違うか?」
「私にはわかりませんっ、総司様の想いなど……」
「そんなはずはない」
志摩子が顔を上げれば、同じく悲しそうにしている斎藤の表情を知った。どうして彼もそんな顔をするのか、志摩子は混乱していた。それでも彼は、とても優しい手で志摩子を包み込む。
「お前は総司の想いを受け取っているはずだ。だから今……泣いているのだろう? 総司がどんな想いで、お前を守ったのかわかっているから」
その言葉に、志摩子は返す言葉がなかった。
辛かった、怖かった。天の攻撃で総司を失うのではないかと、自分のせいで彼の今を奪ってしまいそうで胸の奥がぎゅっと苦しくなった。
生きて戻ってきてくれて、どれだけ嬉しかったことか。同時に安堵して、申し訳なくて涙が零れた。自分はこんなにも総司にしてもらっているのに、返すことが出来ない。返しきれない想いに、更に涙が零れたのだ。
彼の想いの全て。受け取ったからこそ感じた罪悪感。
「総司はきっと、またお前に会いに来るさ。その時は俺達も、笑顔で迎え入れてやろう。だから今は、休息の時なのだ。総司が守ったお前を、お前自身が今度は大切にするんだ。それがきっと、想いを返すことに繋がるはずだ」
「……そう、ですね……っ」
斎藤の言葉は、志摩子の心へと浸透していく。
心から涙を流し、それを彼は拭い続ける。
離れていても、こうして距離がけして遠くなるわけではないと、互いに知る。
役目を終えた志摩子は、名残惜しげに山崎と共に屯所へと戻っていく。
斎藤と志摩子の間に、また会おうという言葉はけして交わされることはなかった。