第27章 滴
「使いで参りました」
「入ってくれ」
何処かで聞いたことがある声……――
そう思った矢先、戸を開けるとそこには斎藤の姿があった。
「え……? 一様?」
「ん……? 志摩子か。ん? いや、志摩子……何故お前が文を?」
「歳三様に頼まれて……その」
「……まったく、あの人は。そうか、志摩子が届けてくれるとはな……あまりにも意外すぎてどう言葉をかけてやればいいのか」
「私のような頼りない使いですみません」
「いや、そんなつもりで言ったのではない。その……もっと、近くまで来てくれないか?」
「は、はい……」
なんだかそんな風に言われれ、志摩子は少しだけ照れくさい気持ちになった。理由はどうであれ、久しぶりに斎藤に再会出来たのだ。嬉しいという気持ちで、心が満たされていくのを感じていた。
手を伸ばす斎藤、自然な動作で志摩子が手を取った。
途端、ぐっと引き寄せられて気付けば斎藤の腕の中へ、志摩子は閉じ込められていた。
「一様……?」
「元気そうで安心した。お前の姿を目にした時、何処か安心した自分に気付いた。怪我はしていないな?」
「……はい」
「ちゃんと、食べているか?」
「勿論ですよ。一様は、怪我はないですか? 元気に……過ごせていますか?」
腕の力が緩められ、互いに顔を見合わせた。
「お前と離れてしまって、少しだけ俺は元気ではなくなってしまったかもしれない」
「え? それはどういう……」
「お前の笑顔が、当たり前のようにそこにあったのだ。当然なのかもしれないな」
そう笑う斎藤に、志摩子もつられるように笑い出す。