第27章 滴
「お前に言っておくことがある。まずは総司の事だ」
「はい」
「思ったより傷は深いわけじゃないがあいつの体調不良がどうも引っかかるものがある。お前、何か知らないか?」
「……知りません」
「そうか。志摩子には悪いんだがな、総司の奴を松本良順(まつもと りょうじゅん)先生のところへ連れて行くことになった。これは俺達幹部の決定だ」
「え!? それじゃあ、志摩子さんは……っ」
「あいつが総司の怪我に、罪悪感を覚えているのは知ってる。だがな、志摩子は何も悪くねぇ。罪悪感を持つ必要はないんだ。このまま総司を此処に置いても、今度は生きて戻って来れるかわからねぇ。体調もずっと悪そうだしな……前線を離れた方がいい」
「でも……!」
土方の鋭い瞳孔が、千鶴を捉える。びくりと、嫌な寒気を覚えて千鶴は押し黙ってしまった。このまま千鶴が意見したところで、決定が覆ることはないのだろう。
「……志摩子は俺達で守る。もうあいつに、あんな顔をさせて堪るか」
「土方さん……。土方さんは、志摩子さんのこと……どう思っているんですか?」
「あ?」
土方は少しだけ拍子抜けしたように肩をすくめるが、どうしたものかと言葉に迷っていた。そして……。
「俺はあいつを、愛してる」
千鶴とけして目を合わせぬように、言葉を紡いだ。