第27章 滴
「あの……本当にお節介だとは思うのですが。その、本当にお部屋で身体を休めた方がいいと思います」
「総司様が目覚めない今、私などが寝ている訳にも……」
「皆心配しているんですっ。志摩子さんまで倒れてしまったら……」
「それでも!」
「おいおい、二人共。朝から何を言い合いしてるんだ?」
そこへ姿を見せたのは、原田だった。
「千鶴、土方さんが呼んでたぞ。行ってこい」
「え!? あ、はい。では志摩子さん、また後で来ますからね」
千鶴が慌ただしく走り去る中、入れ違うように原田が「よっこいしょっ」と志摩子の隣へと腰を下ろした。
「どうした志摩子。んな浮かない顔してると、総司に笑われるぞ」
「……いっそ笑って頂きたいところです」
「そうか、わかった。あっはっはっ!」
「……! ど、どうして左之様が笑うんですか!?」
「お前が誰かに笑い飛ばしてほしそうに見えたからだ」
「……っ、私のことは放っておいて下さい」
「そういうわけにもいかないだろうが」
原田は大きな手で、優しくけれど少しだけ乱暴に志摩子の頭を撫でた。
「総司のことが心配なのは、何もお前だけじゃない。此処にいる誰もが、総司を心配してる。土方さんも、千鶴も、俺達も皆だ。お前一人が抱え込んで、罪悪感に埋もれることはねぇよ」
「でも、私が此処に居続けなければ総司様は……っ」
「志摩子! それはな、それだけは言っちゃいけねぇんだ」
「……っ」
初めて聞く原田の厳しい言葉に、志摩子は押し黙る。そんな志摩子を見て、原田も小さく「悪い」と言葉を濁した。
誰もが誰かを大事にするが故に、守られている自分に気付いた時……それは罪悪感へと変わる。志摩子のように。