第27章 滴
沖田が眠っているであろう部屋の前で、志摩子は座り込んで膝を抱えていた。そこへゆっくりと足音が近付いて行く。志摩子が酷い顔で、上を向けば優しく笑う千鶴がいた。
彼女の手にはお盆と、その上に湯呑みが乗っていた。
「志摩子さん、温かいお茶をいれました。よければ飲んで下さい」
「……ありがとうございます」
「沖田さんのことが心配なんですね?」
「はい……。私のせいで、総司様は怪我をしてしまったようなものですから」
「志摩子さんのせいではないと思います。きっと、沖田さんだってそう言うと思いますよ」
「そうかもしれませんね」
志摩子は湯呑みを受け取ると、ゆっくりお茶を飲み干していく。お茶の温かさだけではなく、千鶴の優しさも体内へ吸収されたような気がした。
「土方さんも心配していましたよ? 何度部屋に戻れと言っても、全然聞かないと」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「いえ! そういうわけじゃないんです。ただ……志摩子さんにも少し、休んでもらいたいだけなんです」
「私は此処で休んでいますので、大丈夫ですよ」
「大丈夫なんかじゃありませんっ!」
思わず千鶴は大きな声で言い返してしまう。すぐに我に返り、浮かない顔で志摩子の横に千鶴は腰を下ろした。志摩子も皆の想いがわからないわけではなかった。それでもこの場を離れることが出来ずにいた。
罪悪感から来る罪の意識か、それとはまた別の何かなのか。
千鶴は心配そうに志摩子を見つめた。