第26章 命
「……! そ、総司様!?」
「志摩子ちゃんは慌ててばかりだね……。小刀まで持って、僕を守ってくれたんだよね。ありがとう」
「そんな……っ」
「戦えないはずの君が、僕のために無茶してくれるなんて。嬉しい……な……」
「総司様? 総司様……!?」
ゆっくりと沖田の手から力が抜ける。するりと落ちて、瞼を閉ざしてしまう。
まさか……! 志摩子は沖田の頬を包んで、体温を確かめる。だんだん冷たくなっていくのを感じて、大きな声で叫んだ。
「誰か!! 誰か来て下さいっ!!! 誰か……っ!!」
「呼んだか!? 志摩子!!」
すぐに土方が駆けつけて来た。それを見た途端、志摩子は一気に泣き崩れる。
突然のことに驚く土方だったが、すぐに血塗れの沖田を目にして顔色を変える。志摩子へと駆け寄ると、その小さな肩を抱いてやる。
「おい、志摩子! これはどういうことだ!?」
「話は……後にっ……早く、早く総司様を……どうか、助けて下さいっ!!」
志摩子は土方へと泣きつくように、彼の胸に顔を埋めた。泣きじゃくる志摩子を宥めていると、志摩子の叫び声に反応して次々に隊士達が集まり始める。
「おいお前ら! 総司を連れていけ!! すぐに手当てだっ」
土方は志摩子を抱きしめ、沖田から引き離す。隊士達に連れられ、沖田はすぐに屯所内へと運ばれていく。
「志摩子、総司を救うためにはお前の力も必要だ。立てるな?」
泣きながら頷く志摩子に、土方は隊士達が誰もいなくなったのを確認すると……強く彼女を抱きしめて頭を撫でた。
「……よく頑張った。行くぞ」
志摩子の涙交じりに聞こえてくる嗚咽が、土方の心をぎゅっと絞めつけていた。