第3章 霧
「雪村! 総司!!」
また一人、新選組の男が飛び込んできて沖田と雪村という人物の前へ庇うように出る。風間はその者の振り下ろされた刀を苦なく受け止める。
「貴様っ、何者だ!!」
「ほぉ……? 己は名乗らずに、人に尋ねるとは」
「俺は新選組副長、土方歳三!!」
「……風間千景だ」
風間はちらりと雪村へと視線を向ける。不安げに揺れる瞳は、もう先程の黄金色をしていなかった。そして、意識を押し入れに隠れている志摩子へと向ける。
風間は土方の刀を薙ぎ払うと、口を開く。
「今暫く、それを貴様らに預けておこう。大事にするがいい」
「何を……!」
土方の言葉を最後まで聞くことなく、風間は忽然と姿を消した。
「……なん、だと……?」
張りつめた空気が一気にほどけていく。
「消えた、だと……?」
土方は気配を探す。しかし、先程の風間の気配は何処にもない。どういうことだ? だが、それと同時に別の気配を察知する。土方は刀を握り締めたまま、ゆっくりと押入れへと近付いて行く。
「土方さん……?」
「雪村、何故お前が此処にいる」
「……あっ、えっと……その……」
「話は後だ。今は……」
がっと土方は押入れの戸に手をかけ、勢いよく開く。