第3章 霧
「……しつこい奴だ」
素早く抜刀すると、沖田の刀と鈍い音を奏でながら刃を交え始める。金属が軋む音を聞きながら、志摩子は一人押入れの中で身を縮めていた。
――今、一体押入れの外で何が起きているのです!?
志摩子の額に冷や汗が滲む。こんな思いは初めてだった。
風間は鬱陶しそうに顔を歪め、沖田の刀を力で薙ぎ払うと容赦なく彼の腹に蹴りを一撃食らわせた。
「……ぐっ……! がはッ」
腹を押さえ、立ち上がるものの沖田は突然大量の血を吐き出した。それを見た風間は、大きな溜息を吐く。
「待て! 僕はまだ……戦えるッ」
「……死に急ぐ気か。まぁ、それもよかろう」
立ち去ろうとした風間だったが、沖田の瞳を見つめ刀を振り上げた。
「死ね……ッ!」
「沖田さんっ!!」
風間が刀を振り下ろしたと同時に、誰かが飛び込んできては沖田を庇う。風間はぴくりと眉を歪め、大きく眉間に皺を寄せる。少年のようにも見えるが、風間からはただの小娘に見えた。その者の頬には、先程の風間の刀の傷が一線出来ており血が流れている。
「……そこをどけ」
「退きません!!」
その者が強く風間を睨む、するとその者の瞳が黄金に輝きみるみるうちに頬の傷を治癒していく。そこで風間は目の色を変えた。
「貴様……我が同胞か。何故邪魔立てする?」
「え……?」
「わからぬというのか。ならば、教えてやろう」
ゆっくりと風間が少女へと手を伸ばせば、大きな足音が近付いて来ることに気付く。