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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第25章 幸



「南雲薫の目的は?」

「さあ……ですが、あの様子は雪村千鶴を新選組から奪うつもりではないかと」

「……俺にはあまり関係のないことだが。綱道は変若水の研究をしている、鬼の紛い物を作り出す研究だ。鬼の誇りのため、いずれは俺が一掃する。今は様子を伺っておけ」

「わかりました。私はこれから用事で数日開けます」

「勝手にしろ」


 天霧がいなくなった後、志摩子の姿を確認して身を隠すように裏路地へと入る。陰から眺めながら、俺は静かな時を過ごしていた。


「必ずお前を、蓮水家の忌々しい呪縛から解放してやる。だからそれまで、俺の目の届かないところで死ぬな」


 死ぬことは許されない。万が一、そんなことがないように。新選組よ……志摩子を傷付けるようなことがあれば、容赦はせんぞ。


 俺は背を向け、その場を離れる。

 どうか信じていろ。俺だけがお前を……自由にしてやれる。


「風間、千姫様がお見えになっております」

「……今行く」


 玄関先に出ていけば、怖い顔をした千姫とそのお目付け役がいた。こいつらが俺の前にわざわざ現れたということは、志摩子絡みか……雪村千鶴のことだろう。


「雪村千鶴には、手を出さないで」

「……そんなつまらぬことを言うために、わざわざやってきたというのか? ご苦労なことだな」

「それと、志摩子さんをどうするつもり?」

「……」

「傍に置くわけでもなく、あんな新選組とかいう野蛮な人達のところに置いているそうじゃないの。貴方は蓮水がどういう家なのか、知っているでしょう?」

「無論。喚くな、耳障りだ」

「志摩子さんを連れ出して、何かに利用するつもり? だったら、この私が力ずくでも止めてみせるわ」

「お前如きの鬼に、俺が止められるとでも? 笑えんな。志摩子のことは、俺がきちんとその時を整えているところだ。邪魔をするな」


 今まで何も出来なかった奴らが、志摩子と俺のことに口を出すとはなんと愚かな。

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