第3章 霧
「千景様!?」
「志摩子、お前に自ら選択肢を導き出し……選ぶということを教えてやる」
「何を……っ!?」
部屋へと再び、慌ただしく不知火が入って来た
「不知火、どうしました?」
「幕府の奴が動き出した。俺は此処を離れる、後は勝手にやりな」
「……そうですか。わかりました」
不知火は軽々と窓から飛び降り、その場を離れていった。風間がゆらりと、戸の方へと視線を向ける。否――戸は開け放たれ、そこへ浅葱色の羽織を身に纏った新選組の沖田ともう一人、小柄で髪を高い位置に上で一つに束ねた男が飛び込んでくる。
「新選組一番組組長、沖田総司」
「同じく新選組、俺は八番組組長。藤堂平助!」
「威勢がいいのは大変結構。だが、私達は貴方達と戦う理由はありません」
「それじゃあ、あんた達は何者なんだ」
「お答えする必要はありません」
「そうかよ……じゃあ、あとでゆっくり聞かせてもらうぜ!」
藤堂が勢いよく天霧に斬りにかかる、しかし天霧は糸も容易く刀をそのまま掴み、藤堂の額へと重い拳をぶつけ吹き飛ばす。
声を上げることも出来ず、藤堂は大きな音と共に後方の方へ吹き飛ばされ唸り声を上げていた。天霧がゆっくりと藤堂の方へ向かう中、それを横目で見つめ沖田は真っ直ぐと風間と対峙する。
「やってくれるね……ッ」
沖田の荒々しくも、無駄のない剣技が風間に襲い掛かる。しかし風間は軽々とまるで太刀筋が見えているかのごとく、次々と避けていく。風間の瞳に、興味の色は灯っていない。