第24章 春
「私は確かに非力です。新選組には相応しくないでしょう」
「なら……」
「ですが私には、彼らが与えてくれるぬくもりを……強さの意味を、刀を握る覚悟を見て参りました。それはけして、容易いことなどではない。私ごときが、小手先だけで剣を学ぼうなどと彼らへの侮辱へとなるでしょう。そして、戦うことは刀を握ることではないと、そう教えられまし
た」
「ほぉ……?」
「戦うことは、生きることです。人は誰もが、何かと戦い生きています。それは女子供、男も誰もが平等にです。傷ついて彼らを出迎え、手当てする事が今の私の役目でありそれが私の戦いです。伊東さんは、私に不満があるのやもしれません。それは承知の上です、初めから他人に受け入れられる存在に人はなれません」
「……」
「だから私は、伊東さんにも認めて頂ける存在になるため、努力を惜しむつもりはありません。医学が皆様の役に立つのなら、私は極めるまで。今の私があるのは、歳三様を含めた新選組の皆様です。伊東さんの思想に、私は同意することは出来ません」
「……なるほど。勤勉というだけではないということね」
伊東は立ち上がると、志摩子の前へとやってくる。何かされるのでは? と思い込んでいた志摩子はぎゅっと目を閉じ顔を伏せた。
「もっ、申し訳ありません」
「……志摩子さん、両手をお出しになって」
「……は、はい」
恐る恐る手を差し出す。すると……意外なことに、伊東は志摩子の手をぎゅっと握った。
「え……?」
思わず拍子抜けした志摩子は、きょとんとした瞳で顔を上げた。