第24章 春
「志摩子は我らとは、異なる思想を持つ人物です。伊東さん」
「あら……斎藤さんも、意見するおつもりで?」
「確かに最初は戦えぬ身で、屯所に居座る彼女を誰もが快く思っていないことは副長もご存じでした。戦うことが全てではない、それはただの綺麗ごとにすぎないでしょう。ですが……その大切さを教えてくれたのは、他の誰でもない彼女です」
「戦うことが全てではない、ねぇ……?」
「志摩子は、新八の言う通り自らの意思で何も出来ない自分を責め、自分に何か出来ぬものかと模索していました。その結果、毎晩寝る間も惜しんで医学に励み……自らの手で、今の居場所を手に入れたのです」
「一様……」
まさか彼らがそんな風に思っていたとは。勿論、志摩子には初めて知ることだった。
「刀を握れるに越したことはない。だが彼女は、刀などなくとも己の意思を貫き生きていく力を持っている。その心にあるのは、それこそ覚悟という名の一振りの剣だ。ならば彼女も俺達と同じ、形は違えど共に戦う仲間の一人。俺はそんな彼女が……新選組に相応しくないなどとは、思っていません。これはけして、甘えではない」
斎藤が軽く睨み付けるように、伊東を一瞥する。伊東は不服そうにお猪口を手に、一気に酒を飲み干した。志摩子は一人、次の伊東から出る言葉がどんなものなのかと……緊張で息を呑む。
「志摩子さん自身は、自分の事をどう評価していらっしゃるの?」
「私、ですか?」
「そうよ。この際ですもの、貴方の意見を聞かせて頂戴」
本当に発言していいものかと、志摩子は俯いてしまうがちらりと隣を見上げれば、斎藤がまるで大丈夫だと告げているかのように、優しい眼差しがそこにはあった。
志摩子は意を決して、伊東へと顔を上げた。