第22章 遙
「志摩子、すまない。副長と談笑中に」
「いえ、大丈夫です。寧ろ不謹慎な話ですが、助かりました」
「助かった……? なにゆえだ」
「歳三様に出かけないかと誘われて、返答に困っていたのです。不謹慎だとは思いますが、助かりました」
「副長に……。そういえば、志摩子は最近よく副長と一緒にいるところを見かけるな。仲がいいのだな」
「どうなのでしょうか? 悪くなはいと思っていますけど」
志摩子が微笑みながら答える。斎藤は襟巻を少し上げて、口元を隠す。何か迷っているように視線を泳がせた後、斎藤は口を開いた。
「実は今から食材の調達にいかねばならなくなった。しかし家事全般を今は志摩子達に任せている、そこでお前に共に来てもらいたい。必要なものといらないものを判別をするのが、どうも俺には難しいようだ。手助けをしてはもらえないだろうか?」
「そういうことでしたら、構いませんよ。早速行きますか?」
「ああ、そうしよう」
どうやら買い出しを任された斎藤は、志摩子に食材の見定めをお願いする事に。
早速町へと出かけた二人は、町の市場に顔を出していた。初めて見る市場に、志摩子は少し興奮気味だ。
「一様! 市場とは本当に凄いところなのですね」
「はしゃぐな、転ぶぞ」
「は、はしゃいでなどいません!」
「志摩子……っ」
口ではそうは言うものの、志摩子が人とぶつかりそうになっているのに気付いた斎藤は、咄嗟に彼女を引きよせた。