第22章 遙
「危うく人にぶつかるところだった」
「うっ、申し訳ありません……」
「頼むから、少し落ち着いてくれ。安心して食材を選ぶことも出来ん」
「まるで一様は、私の保護者ですね」
「保護者は副長の方だろう」
「ふふっ、確かにそうですね」
新鮮な野菜や果物、魚に肉。色々な店で比べながら、一つ一つ予算内に収まるように買い物をしていく。
「おっ、そこの旦那! どうだい? うちの野菜買っていかねぇかい」
「野菜か……大根がまだだったな。あるか?」
「へい、勿論ありますとも。今朝獲れたばかりの新鮮な大根ですぜ! ぶりと大根の煮物なんてどうです? 絶対美味いですぜ」
「悪くないな……」
「いやぁ、しかし旦那は随分別嬪な嫁さん連れてますねぇ」
「「えっ」」
思わず斎藤と志摩子は声を合わせてしまった。その様子は、益々夫婦に見えるのか店主は更に煽るように二人をからかい始める。
「よっ! 流石夫婦。息ぴったりですねい、羨ましいことだ」
「あ、あの! 私達はけしてそんな関係では……」
「恥ずかしがることはないって! もしかして、夫婦になったばかりかい? いいねぇ、初々しくて。だったらその反応も頷ける」
「俺と志摩子が……夫婦」
何故か斎藤はその場で俯いていた。志摩子は何があったのだろうと、斎藤に声をかけ顔を覗き込もうとするが……。彼が耳まで真っ赤になっていることに気付き、志摩子もつられるように頬を赤く染めた。