第22章 遙
「……現在俺と山崎、平助で魚の行方を追っています。そろそろ此方に盗人が来るかと思いまして、ご報告を」
「いやいやちょっと待て。一体どんな奴に盗まれたって言うんだ? しかも報告ってなんだ。んなことで一々報告してくるなよ」
「申し訳ありません。副長を驚かせまいと、先に伝えておくべきかと思いまして」
「で……一様、その盗んだ相手とは?」
「……猫です」
その場に沈黙が流れた。
と思いきや、騒々しい音がだんだん此方に近付いて来る。音のする方へと三人が視線を向ければ、猫が魚をくわえておりそれを追いかける山崎と平助の姿があった。
「魚を返せ! 猫!!」
「待ちやがれっ! 魚は人数分しかねぇんだから、返せよっ!!」
斎藤が立ち上がり、猫を挟み撃ちするように向かって行く。
「一君! そっち追い込むから捕まえてくれ!」
「わかった。副長! そちらに行ったら頼みます」
「お、おい」
土方と志摩子が動揺する中、事態は急展開を迎える。
猫へと一斉に飛びついた平助と斎藤、だが身軽な猫は二人を嘲笑うようにぴょんっと飛びあろうことか土方の腕の中へと飛び込んでいった。
優しく猫を受け止めた土方は、魚をくわえた猫と目が合う。誰もがその光景に、我が目を疑った。いや、これは何かの間違いだ。あの鬼の副長の腕の中へ、猫が飛び込むなんて夢に違いない。少なくとも山崎と平助、そして斎藤が同時にそう思った。