第22章 遙
「お前、なんか吹っ切れたような清々しい面構えになったな」
「え? そうでしょうか?」
「おう。まぁ、それくらい良い顔してくれた方が俺は安心するがな」
「大きなお世話です」
「……志摩子、今から時間あるか?」
「どうしたのです、急に」
「俺と出かけろ」
「……はい?」
あまりに直球な言葉に、志摩子は思考がついていかず思わず聞き返してしまった。今までの土方ではありえない。心なしか、志摩子に動揺の色が見える。
「だから、俺と出かけろっつってんだよ! 嫌なのか……?」
「えっと……買い出しにでも行くのですか?」
「お前なぁ……休日に男が女を出かけに誘ってんだぞ。察しろよ」
「……察しろ、とは?」
「お前それ本気で言ってんのか」
土方は眉間に皺を寄せた。明らかに不機嫌な顔だ。しかし志摩子には、どうしても何故彼がそんな反応を見せるのかまったく理解できずにいた。首を傾げる始末だ、土方は大袈裟に大きな溜息をついた。
「はぁ……どうしてこう、お前は鈍いのか。緊張して誘ってる俺が、馬鹿みてぇじゃねぇか」
「出かけに誘うのに緊張なんてしますか?」
「……惚れた女を、二人で出かけようって誘ってんだぞ。緊張しないわけねぇだろ」
「……あ」
ぼそっと小さく声に出した土方の言葉に、流石の志摩子もようやく気付く。そういえば、つい先日土方に想いを告げられたばかりだ。告げられたからと言って、どうこうって話はなかったが。とはいえ、今までと彼が違って見えるのは当然だろう。
知らず知らずのうちに、土方の一言で二人の関係は変化を遂げたのだから。それが良いのか悪いのかは別として。