第20章 蝶
「お兄さんが来るってことはさ、お前は選ぶんだろ? 新選組に残るのか、家に帰るのか」
「それは……」
「土方さんがどう考えてるのか知らねぇけど、もうお前はさ……捕虜なんかじゃねぇよ。少なくとも俺はそう思ってる。志摩子はさ、俺達にとって大事な仲間の一人なんだ」
「平助様……」
「なんつーか、こうして改めて言葉にすると恥ずかしいけどさ。きっと皆言わないだけで、そう思ってるはずなんだ。でもさ、俺達男だからさ……志摩子になんて言えばいいのかわかんなくてさ! だからその……いつまでも自分の事、捕虜だとか思って遠慮とかすんなよな」
藤堂はぎゅっと志摩子の手を繋いで、人混みへと入っていく。もう祭囃子の渦中だ。
「志摩子は、俺達新選組の仲間だっ!!」
その言葉と共に、頭上に花火が打ち上げられる。心臓を打つような、大きな音が町全体を包み込む。
「お、花火だ! たまやぁあああっ」
「花火……?」
「綺麗だろ?」
陽が沈んでいく、群青色に染まり始める空に綺麗な花が咲く。月の光を圧倒するような、まばゆい光。
「……はい。とても、綺麗です」
「屋台も寄ろうぜ。ほら、こっち」
藤堂に手を引かれ、屋台へと近付いて行く。離れない様にときゅっと志摩子からも手を握れば、勢いよく藤堂は振り返る。
「……? いかがいたしましたか? 平助様」
「あ、いや……な、なんでもねぇ」
藤堂は鼻を掻くと、まるで顔を隠すようにすぐ前を向いてしまった。
人混みを掻き分け、辿り着いた金魚すくい。志摩子が嬉しそうに覗き込む中、突然藤堂が「げっ」と声を上げた。