第19章 道
「おい、志摩子」
「なんでしょうか、歳三様」
「それだけじゃ足りねぇだろ。もっと持ってけ」
そうして土方が差し出した皿の上には、丸々と大きく作られ所々たくあんが付き出した奇妙なおむすびがそこにあった。
「歳三様……これは?」
「おむすびだろ。どっからどう見ても」
「とても個性的な…おむすびですね」
「お前の分も握ってやる! ちょっと待ってろ」
「え!? あ、あの私はこれで足ります……っ」
「食える時に食っておけ! 腹いっぱい食べるとな、それだけで幸せな気持ちになるもんだ。しんどい時も、辛い時も、悲しい時も、上手い飯とあったかい味噌汁を食えば元気になれる。そういうもんだろう」
「……はい」
もしかしたら、知らず知らずの内に土方には沖田の身体の調子が良くなっていないことに、気付いているのかもしれない。志摩子は不恰好な土方のおむすびを眺めながら、微笑んでいた。
嬉しそうにおむすびを作る彼の姿は、とても無邪気な子供のように見えた。
大量のおむすびと味噌汁を抱えて、ようやく志摩子は沖田の部屋へと到着した。
「志摩子ちゃん、遅い」
「ごめんなさい。台所で一様と歳三様にばったり鉢合わせになったもので。お二人から、お味噌汁とおむすびを頂きましたよ」
「……何そのでっかい丸いやつ。たくあんが飛び出てるんだけど?」
「歳三様からです。食べれる時に、しっかりと食べておけと」
「ふーん……」
沖田は大きくて丸い不恰好なおむすびを掴むと、ぱくりと一口食べた。