第19章 道
「もしかして……疲れているのか?」
「え? あ、どうしてですか?」
「いや……目を閉じていたので、疲れているのか……それとも寝不足なのかと思ってな」
「ああ、いえ。やることが急になくなって。それで、ことこと煮込まれる音を聞いていたら、なんだか心地よくなってしまって」
「そうだったのか。良ければ、味噌汁の味見をしてくれないか?」
「私がですか?」
「ああ、頼む」
特にやることもなかったので、志摩子は斎藤から差し出された器を受け取る。そのまま一口、飲んでみる。適度な濃度に、味噌の味が舌の上を撫で喉を通り抜ける。
「ん、美味しいです」
「そうか、それはよかった。おむすびだけでは足りないだろう、二人分の味噌汁を器に入れておく。持っていけ」
「いいんですか?」
「それくらい構わない。どうせ一人も二人も同じこと、味噌汁くらい大した手間ではない」
「ではお願い致します。ふふ、きっと総司様も喜びます」
「……米が炊けたみたいだ」
斎藤が蓋を開ければ、ふっくらと出来上がった米がきらきらと光っていた。
「本当ならば、少し蒸らした方がいいのだが……」
「すぐに持っていかないと、たぶん総司様機嫌を損ねてしまうかもしれないので。このままで大丈夫です」
「出来立てで熱いだろうから、気を付けろ」
「わかりました」
肩を並べて仲良くおむすびを作り始める。あまりにも呑気な光景に、台所を覗きに来た土方はきょとんとした顔で入って来た。