第19章 道
「あ、あの! お掃除が終わったことだけでも歳三様にご報告をしたいのですが……」
「そのまま帰ってこない可能性がある」
「うっ……で、では少しだけお掃除用具の片付けだけでもさせて頂けませんか?」
「……それなら僕も手伝う」
「え!? あ、いえ……お体に障りますから。えっと、お腹空きませんか!?」
「ん……確かに空いてるけど」
「おむすびを作ってきますので、お部屋でお待ち頂けませんか?」
「……しょうがないなぁ。待ってるから、早くおいでね」
「はい」
渋々沖田は了承すると、何度か名残惜しそうに振り返りつつ、部屋へと向かって行った。それを見送ると、志摩子は慌てて片付けを始めた。沖田の性格は流石の志摩子でも、一年の付き合いにでもなれば少しは見えてくるもので。
本当に待たせてしまうと、次に何を要求されるかわかったものではない。ばたばたと片づけを済ませ、台所へと向かった。
台所に足を踏み入れたところで、なんと斎藤と鉢合わせしてしまう。
「ん……? 志摩子か。どうした、こんな時間に台所に来るなど。昼食ならまだだぞ」
「あ、いえ。私は総司様におむすびを作って一緒に食べる約束を致しましたので、二人分準備が不要になりました。ので、宜しくお願い致します」
「それは構わないが……米なら今炊いているところだ。あともう少し待て」
「そうですか……わかりました。では、此処で待たせて頂きますね」
お味噌汁の味見をしている斎藤と、ことこと規則的な音が聞こえてきて思わず志摩子は目を閉じた。壁を寄りかかり、米が炊けるのを待つ。もしかしたら遅いと、後で沖田に怒られてしまうかもしれないが米が炊けてないのなら仕方ない。
目を閉じている志摩子へと、斎藤は音を殺して静かに近付いた。
「志摩子」
「へっ!?」
突如自分の近くで聞こえてきた声に驚いて、志摩子は目を開けた。予想通り、目の前には斎藤の顔があって心配そうに志摩子の顔を覗き込んでいた。