第19章 道
「志摩子ちゃん」
「なんですか?」
「今日一日、僕と一緒にいて」
「え……?」
「土方さんや一君に何を誘われても、行かないで」
「ええ……?」
突然の沖田の言葉に、志摩子は動揺を隠せずにいた。追い打ちをかけるように沖田は志摩子の手を取り、自分の元へと引き寄せる。
「そ、総司様……っ!」
「……もどかしい」
「え? い、今何か仰いましたか?」
「別に! 何も言ってないよ。それで、陽が沈み始めたら少しだけ屯所を抜け出そう? 見せたいものがあるんだ。志摩子ちゃんにだけ」
「でもそんなことをしたら、歳三様に叱られますよ?」
「あははっ、だからばれないように行くんじゃないの。いいでしょ?」
沖田は悪戯な笑みを浮かべて、志摩子の顎をくいっと上げると顔を近づけた。至近距離で見つめ合うと、志摩子はだんだん恥ずかしさから頬を赤く染め始める。けれどお構いなしに、沖田は念を押す。
互いの吐息を感じて、あと少し近づけば唇が重なるのではないかと思えるほどだった。
「ね、いいでしょ……?」
「……っ、も……もうっ勝手にして下さいっ」
「ありがとう」
ようやく沖田は手を離した。
けれど志摩子の手を引き、歩き始める。