第19章 道
「ほぉ……お前さん、左利きか。珍しいな、まさか……俺と同じような奴がいるとはね」
「そういうあんたも左利きか。何、どちらであっても剣術に右も左も関係ない」
「ああ、そうだな。まったくもってその通りだ。俺は妹に用がある……邪魔しないでもらおうか」
「そうか、それにしては志摩子はあまりあんたの話を聞く気はないようだが?」
「……」
栄が視線を志摩子へと向ければ、まるで斎藤の言葉に同意するように彼女は斎藤の背から顔を覗かせながら斎藤の着物の裾を掴んでいた。
「志摩子……お前まさか、人間に加担するというのか? 愚かで卑劣な、人間なんぞに」
「そんなつもりはありません! ですが兄様……人間はけして、全てが愚かで卑劣なわけではないと思います!! 私はこの人達と共にいて、それを知ることが出来ました」
すると陰から次々と、新選組幹部が姿を見せる。刀に手をかけ、土方が栄を睨み付ける。
「てめぇこそ、何しにきやがった。志摩子に用だ? それにしては随分ご挨拶じゃねぇか。てめぇ、小さい頃に教わらなかったのか? 他人様のところを尋ねに来た時は、きちんと玄関から入って許可を得ろってな」
「……そうか、こいつらが新選組だな? 志摩子」
新選組面々へと栄はぐるりと視線を泳がせた。全ての顔を確認すると、楽しげに笑い始めた。そうして抜刀すると、切っ先を斎藤に向けたまま口を開く。