第18章 病
「こりゃ……すげぇ。摂州住池田鬼神丸国重(せっしゅうじゅう いけだきじんまるくにしげ)」
「やはりわかるのだな」
「わかるも何も……鬼神丸を持ってる奴なんてそうお目にかかれるもんじゃねぇさ。あんた、相当剣に詳しいだろう?」
「さあ、それはどうか。詳しいかはわからんが、拘りはあるつもりだ」
「そうかそうか、鬼神丸の使い手か……。にしても鬼神丸にひびねぇ、おお確かにひびがあんな。ちょっと待ってな、すぐに直してやる」
「ああ、頼む」
鍛冶屋の男は楽しそうに鼻歌を歌いながら、奥へと入っていく。
「旦那! 少し時間貰いますぜ。出来上がるまで町を見てきてくだせぇ」
「わかった。行くぞ、志摩子」
「え? あ、はい」
斎藤の後を追い、志摩子も鍛冶屋を出た。
「一様、あの……鬼神丸とは?」
「あの刀の事か? 摂州住池田鬼神丸国重。俺の愛刀だ。切れ味は申し分なく、鬼神丸国重が打ったとされる刀の一つで、作風は大乱れの刃文でそれを得意としていたと言われている」
「……詳しいんですね」
「己の持つ刀のことは、少しでも多く知っておくに越したことはない。刀を知るということは、本来持つ力を引き出すためには必要不可欠だ。それに知識と目を持ち合わせていれば、どれがよくてどれが駄目かそれさえも見抜くことも出来る」
「一様は、本当に刀がお好きなのですね」
「……そうだな。刀身そのものは勿論のこと、そこに込められた意味に惹きつけられるのだ」
志摩子の視線は斎藤へと釘付けとなる。その視線に急かされる様に、斎藤は言葉を続けた。