第18章 病
「ねぇねぇ、土方さん」
「なんだ急に開けやがって。何の用だ」
「ついさっき志摩子ちゃんが一君と一緒に外に出かけたんですけど」
「それがどうかしたか?」
「気になりません? 二人きりですよ、二人きり。まるで逢引ですよ、あ・い・び・き」
「……」
土方がぴたりと動かしていた筆の手を止めた。それを見た沖田は、追い打ちをかけるように言葉をかける。
「凄くお似合いだっだなぁ。傍から見れば……夫婦みたいでしたよ?」
がたっと音を立て、土方が立ち上がった。あまりに勢いよく立ち上がるものだから、一瞬沖田も驚く。
「ひ、土方さん?」
「……用事が出来た。出る」
「え?」
「何かあったら頼んだぞ」
「え?? ちょっと、土方さん!?」
「お前は来るなよ、まだ変な咳してるだろ」
「あ……」
「ちゃんと休め。大事な時に動けなくなるぞ」
「……はいはい」
土方はそれだけ告げると、早足に屯所を抜け出た。
恐らく彼が向かう先は、たった一つだろう。それがわかっている沖田は呆れたように笑いながら、けれど微笑ましそうに。
「土方さんも、男なんだなぁ」
楽しげに呟いていた。
◇◆◇
町に出た志摩子と斎藤は、一番最初に鍛冶屋を尋ねていた。
「邪魔するぞ」
「お? いらっしゃい。今日はどうかされましたか? 旦那」
「実は刀身にひびが入った」
「ほぉ……見せてもらえますかい?」
斎藤は一本の刀を鍛冶屋の男へと手渡した。それを手にした男は、鞘から刀を抜いて刀身を見た途端感嘆の息を漏らす。