• テキストサイズ

薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第18章 病



「ねぇねぇ、土方さん」

「なんだ急に開けやがって。何の用だ」

「ついさっき志摩子ちゃんが一君と一緒に外に出かけたんですけど」

「それがどうかしたか?」

「気になりません? 二人きりですよ、二人きり。まるで逢引ですよ、あ・い・び・き」

「……」


 土方がぴたりと動かしていた筆の手を止めた。それを見た沖田は、追い打ちをかけるように言葉をかける。


「凄くお似合いだっだなぁ。傍から見れば……夫婦みたいでしたよ?」


 がたっと音を立て、土方が立ち上がった。あまりに勢いよく立ち上がるものだから、一瞬沖田も驚く。


「ひ、土方さん?」

「……用事が出来た。出る」

「え?」

「何かあったら頼んだぞ」

「え?? ちょっと、土方さん!?」

「お前は来るなよ、まだ変な咳してるだろ」

「あ……」

「ちゃんと休め。大事な時に動けなくなるぞ」

「……はいはい」


 土方はそれだけ告げると、早足に屯所を抜け出た。

 恐らく彼が向かう先は、たった一つだろう。それがわかっている沖田は呆れたように笑いながら、けれど微笑ましそうに。


「土方さんも、男なんだなぁ」


 楽しげに呟いていた。




 ◇◆◇




 町に出た志摩子と斎藤は、一番最初に鍛冶屋を尋ねていた。


「邪魔するぞ」

「お? いらっしゃい。今日はどうかされましたか? 旦那」

「実は刀身にひびが入った」

「ほぉ……見せてもらえますかい?」


 斎藤は一本の刀を鍛冶屋の男へと手渡した。それを手にした男は、鞘から刀を抜いて刀身を見た途端感嘆の息を漏らす。

/ 359ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp