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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第17章 月



「あんたこそ、一体誰だ……」

「ボク? ボクは蓮水天。そこにいる志摩子の……義弟だよっ!!」

「……っ」


 容赦なく天の薙刀が二人を襲う。圧倒的速さとその力に、斎藤は志摩子を庇うように避けるが僅かに腕に一線赤い傷を作る。


「一様っ!!」

「志摩子、少し此処にいてくれ」


 少しだけ離れた場所に、そっと下ろすと斎藤は抜刀し瞬時に攻撃を開始する。風間の時とは違い、鮮やかにそして軽やかなその動きはまるで別人のよう。思わず志摩子も黙って見守っていた。

 天は逆に何処までも荒々しく、乱暴的で力任せに見えた。剣技では斎藤の方が上だろう。だが斎藤も慣れない薙刀相手との戦い、そう易々とは勝負をつけることが出来ずにいた。舞うような二人の戦いは、月明かりの下……互いに一歩も譲らない。


「えっと……! お前の名を聞こうか!! 人間!」

「斎藤一……新選組三番組組長だ。だが覚えておく必要は……ないッ!」

「ぐ……ッ!」

「なぜならば……あんたは今此処で、俺に殺されるからだ」


 素早い突きが真っ直ぐに天の腹を貫く。勝負あった……かに見えた。


「ぐあ……ッ……ふ……ふふっ……あはははッ!!」

「……何故……笑っている?」

「ボクは……この程度じゃ、死なないよッ!!」


 素手で斎藤の刀身を掴み、狂気に顔を歪めたまま血を吐き笑う。天のその異常な様子に、斎藤は一度思い切り剣を奴の腹から抜くと、斜めに斬りかかる。

 天は肩から斜めにかけて、深手の傷を負うが彼がにやりと笑ったと同時に彼の容姿に異変が起きる。


 白銀の髪、赤い瞳、斎藤はその姿を目にすると思わず呟く。

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