第16章 傷
「あ、貴方達は!?」
「どうやら思っていたより、鈍くはないらしいな」
「なんでここに!? どうやって」
「我ら鬼に、人間が作った障害など意味をなさぬ」
「鬼? な、何をわけのわからないこと言っているんですか!? 私をからかっているんですか?」
「ほぉ……貴様、鬼を知らぬと申すのか」
ゆっくりと風間は地に降りる。それを見た千鶴が警戒するように、腰にある小太刀に手をかける。
「我が同胞ともあろう者が……雪村千鶴」
「……どうして、私の名を……っ」
「貴様は並の人間とは思えぬほど、傷の治りが早くはないか?」
「……っ」
「池田屋の時と言い、天王山の時と言い……俺の目は誤魔化せんぞ」
「……っ、だったらなんだっていうんですか!」
すっと、風間は千鶴へと手を差し出す。何のつもりかと、千鶴が戸惑うように風間を見上げた。
「貴様は我が鬼の大四家、東の鬼『雪村』の姓と小太刀を持つ貴重なる女鬼。俺と共に来い、所詮此処にいたところでお前のためにはならん。鬼と人間は相容れぬ」
「私は……っ」
「ふっ。お前に拒否権などありはしない、勿論……連れて行くのに同意も必要ではない」
「っ……!」
風間が千鶴の腕を掴もうと、更に手を伸ばした。
だが、二人を切り離すように刃が一線間を切り裂く。
「ふんっ、人間風情が……」
「よう、また会ったな風間」
「土方さん!」
千鶴から風間を引き離したのは、土方だった。遅れて新選組の幹部がやってきて、千鶴を取り囲む。