第16章 傷
「お前だって今じゃうちの一員と言っても、いいくらいの働きをしている。今までと違って警護だからな、そんなに危ないことにはならねぇよ」
「……! あの、私に出来ることがあるなら、是非お手伝いさせて下さい!!」
「よし。で、志摩子」
「はい……?」
まさか自分に声をかけられるとは思っていなかった志摩子は、間抜けな声を上げて返事をした。
「何呆けてやがる。お前はどうするのかって聞いてんだ」
「私ですか……? 私に出来ることなど、何も」
そう志摩子が言うと、背中を押すように沖田が口を開いた。
「志摩子ちゃんがいてくれると、いざって時怪我の手当てをしてもらえるからいいかもね」
「総司の言う通りだ。俺と総司の分まで、警護行ってこいよ」
「ですが……」
「今日くらいは、見送られる側になってもいいんじゃねぇか?」
土方がそう微笑んで志摩子へと言葉をかける。それを聞いた志摩子は、表情を変えしっかりと答えを返した。
「わかりました。私もどうか、お共させて下さい」
志摩子の返事を聞くと、他の隊士達も嬉しそうに声を上げる。
「志摩子はうちの大事な医者だ。遠慮すんな」
「……はいっ、ありがとうございます。歳三様」
「おうよ。俺の……妹だからな」
そう言って、顔を見ずに土方は志摩子の頭をくしゃりと撫でた。志摩子は複雑そうな笑みを浮かべ、土方もまたすぐに手を離した。
未だぎこちなく見える二人に、傍で見守っていた千鶴は一人苦笑いを浮かべていた。
◇◆◇
二条城にて、夜が濃くなる中新選組は警護に当たっていた。千鶴は土方から伝令を受け取り、それを他の隊士達に伝え走っていた。
その光景を息を潜め、見つめている者達がいた。